データ活用で新たな顧客層を開拓。 沖縄空手会館、イベントで“家族連れ”の動向に変化【観光/公共施設運営:OTS MICE MANAGEMENT株式会社】

お話を聞いた方:OTS MICE MANAGEMENT株式会社 沖縄空手会館 館長 長堂 綾さん
データを活用しようと思ったキッカケは?
弊社は沖縄空手会館の指定管理業務を担当しておりますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、令和2~4年度の来館者数や売上は大きく落ち込みました。補助事業を活用しつつ沖縄空手会館のPRに取り組んできましたが、依然として健全経営には至っていませんでした。
令和5年度に入り制限が緩和され、来館者が回復し始めたタイミングで、5年間の指定管理運営の中で得た知見を整理し、残りの1年半で重点的に取り組むべきことを明らかにしたいと考えたのがきっかけです。
課題として浮上したのは、平日の道場稼働率の低迷や、資料室の入館者数、そして全体的な売上の伸び悩みでした。これらを解決するために、新たな来館者層の獲得が不可欠であると考え、データを用いたアプローチに着手しました。
データから明らかにしたかったことは?
弊社が運用する沖縄空手会館のLINE公式アカウントのフォロワー分析を実施したところ、女性フォロワーの比率が高く、特に35歳以上の女性が多いことが判明しました。この層は、空手を習う子どもの保護者である可能性が高いと考えられます。
そこで、「女性フォロワーをターゲットにしたイベントを実施すれば、その家族や知人が来館するきっかけになり、新たな来館者層獲得のきっかけにならないか」という仮説を立て、まずは関心を持ってもらいやすい音楽イベントを企画することにしました。

画像:沖縄空手会館公式LINE

画像:沖縄空手会館公式LINEのフォロワー属性(2024年8月時点)
使ったデータはどのようなものですか
音楽関係イベントを企画し、2024年8月31日に「Jazzライブ in 沖縄空手会館」を開催しました。開催前後で取得できた以下の複数のデータを活用して来場者の動向を分析することにしました。
- LINE公式アカウントのフォロワー属性(性別・年齢・地域)
- LINEのイベント告知配信データ(配信人数・開封人数)
- イベント参加者データ(1ドリンク制によるカウント)
- 人流データ(マチレポ)※1
データを活用して分かったことは?
イベント前・当日の各タイミングで収集したデータから、以下のような分析結果が得られました。
① イベント前
イベント前の告知については、公式LINEフォロワーのうち「沖縄県内在住かつ35歳〜49歳および50歳以上」の1,200人を対象に、8月9日に告知配信を実施しました。その結果、1,121人が開封し、開封率は93.4%と非常に高い数値となりました。さらに、イベント当日(8月31日)の15時には再度告知を配信。再配信では対象年齢の下限を5歳引き下げ、「30歳〜49歳および50歳以上」とし、配信対象は1,350人(+150人)に拡大しました。これに対し、約600人が開封し、開封率は44.4%と、前回に比べて大きく低下しました(-49.0ポイント)。

画像:沖縄空手会館公式LINEイベント告知画像

画像:沖縄空手会館公式LINEイベント告知
② イベント当日(来場カウント)
イベントは多くの方々に来場してもらうため入場無料とし、来場者数の把握には「1ドリンク制」を導入しました。その結果、ドリンク購入ベースでの来場者数は124名。会場(特別道場前庭)のキャパシティは約150名を想定していたため、約82%が埋まった計算となります。
一定の集客効果があったと評価できますが、2回目の開封率の低下や、開封者数に対する来場者数のギャップを踏まえると、開封後の行動を促す施策の検討が今後の課題です。
③ イベント当日(人流データ)
イベント当日、目視によって女性を含むファミリー層の来場が多数あったことが確認されましたが、より客観的に来場者の属性を把握するため、人流データ(マチレポ)を用いた分析を行いました。

画像:マチレポ分析エリア(沖縄空手会館)
イベント当日である8月31日とその前週の8月24日で比較した結果、以下のような傾向が見られました。
来場者数:イベント当日は、前週末と比較して来場者が約74ポイント増加。
滞在時間:30分未満の短時間滞在が13.3ポイント減少し、1時間~2時間の滞在が9.9ポイント増加。来場者がイベントを目的に、会場に長く滞在していたことがうかがえます。
性別年代:イベント当日は、「10代以下の男性」(37.2%)が最も多く、次いで「10代以下の女性」(23.8%)、「50代女性」(14.5%)、「30代女性」(12.3%)、「40代女性」(12.2%)と続き、若年層およびその保護者世代の女性が多く来場していたことが分かります。
ペルソナ構成:イベント当日の来場者属性で最も多かったのは「ニューファミリー」で56.2%。次いで「地方の大家族・シニア」層が29.7%、そして「都市部の単身層」が14.1%となり、この3つの層で全体を構成していました。
比較変化:前週(8月24日)と比較すると、「ニューファミリー」は23.8%から56.2%へと32.4ポイント増加しており、ターゲット層の来場が大きく伸びたことが分かります。また「都市部の単身層」も前週0%から14.1%と新たに出現しており、新しい層の関心も引き付けたことがうかがえます。

画像:マチレポ分析データをBIツールで可視化

画像:ペルソナデータ(マチレポ)※2
| 属性 | 説明(一部抜粋) |
|---|---|
| ニューファミリー | 10歳未満の子供と、30~40代の親世代が多くみられるセグメント)。 |
| 地方の大家族・シニア | シニア世帯のセグメント。5人以上の3世代家族。 |
| 都市部の単身層 | 人口密度が非常に高く、20~40代のマンション住まいの単身層。 |
| 公団住まい | 公営住宅に住む世帯。 |
| 近郊の成熟した住宅街 | 都市近郊に位置する移住期間も比較的長い成熟した住宅街。核家族世帯が多い。 |
これは、「女性フォロワーをターゲットにしたイベントを実施すれば、その家族や知人が来館するきっかけとなり、新たな来館者層を獲得できるのではないか」という仮説に対し、「家族で来やすい休日のイベントを通じて来館が実際に促進された」ことを裏付ける結果となっています。
仮説通りの効果が数字と傾向の両面から確認できた点は、今後の企画にとっても大きな示唆となります。
今後どのようにデータ活用を推進されますか?
イベントで得られた知見を、今後の施策へと繋げていきたいと考えています。Jazzライブ以降、近隣の小学校との連携による空手体験など、地域交流の取り組みも進めており、これらの効果についても引き続きデータで検証していく予定です。最終的には、施設の稼働率向上が目標です。来館者を県内・県外で区分し、人流データをさらに詳細に分析することで、観光客だけでなく地域住民にも選ばれる施設づくりを目指していきます。
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※1株式会社Agoopが提供する、スマートフォンの位置情報データを活用した人流マーケティングツール。
※2 ペルソナ構成とは、来場者やユーザーを年齢・性別・家族構成・ライフスタイルなどの特徴で分類し、それぞれの割合を示したものです。ペルソナデータはAgoop社と提携する技研商事インターナショナル社が提供するc-japan®データを元にした分類にて推定。