データ分析から見えてきた客数アップの可能性【飲食:えん沖縄】

更新日:2024.03.27

お話を聞いた方:株式会社 BRIDGES 代表取締役社長 又吉 真由美さま

        企画・マーケティング部 部長/えん沖縄 店長 伊藤 兼介さま

データを活用しようと思ったキッカケは?

当社は2008年の設立以降、沖縄県内で飲食店運営事業を15年ほど続けており、データを活用した業務の効率化や仕入改善などは常日頃から取り組んでいました。

しかし、2020年に始まったコロナ禍では、年間ベースでの店舗の売上が最盛期の半分以下にまで落ち込むなど、これまで経験したことのない状況に直面しました。

2023年に入って、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行などがあり、沖縄県は観光客数がコロナ前の水準まで回復しつつあるとのことですが、当社の店舗は長らく地域の方にご利用いただいてきたということもあってか、観光客数が戻ったからといって、コロナ禍で家飲みなどになれてしまった従来のお客さまの足取りが回復しているという状況にはありません。

そうした状況もあり、これまでにないデータの活用や考え方はないかと模索していたところ、ISCO様よりこの事業のお話を頂き、取り組み始めた次第です。

データから明らかにしたかったことは

飲食店、特に当社のようなお酒を伴うディナー営業がメインの飲食店の場合、お客さまが1回転しかしないという現状があります。

席数も決まっているので「客数( 席数×回転数 )×平均客単価」が1日の売上の上限となります。

そうしたなか、より収益性を高めるために行う取り組みとしては

  1. 席数を増やす(席数×回転数=客数となるため)
  2. 回転数を増やす(席数×回転数=客数となるため)
  3. 客単価を上げる

といったことを実施していく必要があります。

回転数を変えない場合、お客様の来店数は席数以上にはなりませんので、より多くのお客さまにご来店いただくには席数を増やさなければなりません。通常は店舗の改装・リニューアルにより席数を増やすといった取り組みを行いますが、これについては費用対効果を考えると一旦選択肢から外さざるを得ませんでした。

また、お客様の平均単価の上昇については、現在ご利用いただいているお客様の多くがコースのご注文や飲み放題のご注文ということもあり、単価を上げることが難しい状況でした。

そうしたことを考えますと、現在1回転となっているお客様の回転率を上げることで、席数以上のお客様にご来店いただき、売上につなげる取り組みを行うことが先決と考えました。

お客さまが何時にいらっしゃって、何時にお帰りになるのか、ご予約のお客様と飛び込みのお客さまの比率はどれくらいなのかといったことが把握できれば、回転数を上げるために必要な取り組みを検討できると考え、その部分を重点的に分析したいと考えました。

使ったデータはどのようなものですか

自社のデータとして、店舗の売り上げデータ(2022年4月から2024年1月まで)に加え、お客様の人数、構成や滞在時間、ご注文内容などが把握できる予約データ(2022年10月から2023年6月までのもの)のほか、当店で頂戴したお客様の名刺データについても、どちらからいらしたかを分析するために使用しました。

なお、売上データと予約データの取得期間が違うのは、システムの入れ替え等のため取得できるデータのうち、両方のデータ期間が被っているもので用意しました。

また、この期間については新型コロナウイルスの蔓延期間に重なっていることから、分析のための係数として必要と考え、沖縄オープンデータプラットフォームでオープンデータとして公開されている新型コロナウイルス感染症関連のデータも用いました。

どのようにデータを活用しましたか

用意したデータをMicrosoftのPower BIというツールで可視化したダッシュボードをもとに、様々な角度から分析を行いました。

可視化した項目は、

  • 売上と客数の推移
  • 売上詳細(個別客単価等)
  • 客数詳細
  • 滞在時間
  • 予約状況
  • コロナ禍での比較

といった項目です。

特に滞在時間の分析については、男性/女性/グループの構成や入店時間と退店時間のクロス分析と売上の相関など、どのようなお客さまがどの程度の時間滞在されるのか、そのお客さまはご予約の方なのかそうでないのか、曜日やどの予約サイト経由での予約か、予約の際にコースメニューを頼まれているのであれば、どのようなメニューを頼まれるのか。

こうした観点から細かく分析したところ、次のような傾向がわかりました。

  • 売上が高いグループは入店時間17:30〜18:30までのグループ
  • 売上が高いグループの退店時間は21:00までに集中している
  • 最も売上が高いのは滞在時間が2時間から2時間半のグループ
  • 男性のみのグループは女性のみのグループの2倍近い平均客単価がある
  • 男性のみのグループより、男女混合のグループの方が10%から20%程度平均客単価が高い
  • 女性グループの滞在時間で最も多いのは1時間から1時間半の滞在
  • 男性グループの滞在時間で最も多いのは2時間半、次いで2時間
  • 男女グループの滞在時間は1時間から2時間半まで満遍なく分布
  • Webサイト別の予約件数はコロナ禍では食べログが最も多く、次いで多いぐるなびの2倍以上
  • アフターコロナでのWebサイトの予約件数はHotPepperが最も多く、次点の2倍程度
  • HotPepperの予約は席のみの予約が8割を超える
  • ぐるなび、ヒトサラは飲み放題のコース予約が5割以上(ヒトサラについては全ての予約がコース)

画像:入退店時間の分布や滞在時間、グループ構成別の売上など、細かなデータをダッシュボードに

また、コロナ禍の影響についても、可視化して確認しました。今回の対象期間においてはコロナ陽性者数と来店者数にそこまでの相関はなく、コロナ禍で離れてしまった客足はコロナ陽性者数が減っても回復していないという印象です。

画像:新型コロナ陽性者数と来店者数には相関関係がなく、コロナ禍で減った来店数はコロナ陽性者数が激減しても回復していない。

また、お客様が県内・県外のどちらからいらっしゃっているかにも着目しました。当社の店舗は県内企業の方のご予約も多く、多くはお電話にてご予約を頂戴しております。従って、WEB予約に関しては主に観光でいらっしゃった方ということになります。その方々の傾向としましては、滞在が2時間から2時間半、飲み放題付きのコースをご予約される場合が多く、男性グループまたは男女混合のグループで、平均客単価も高いとう傾向が見えました。

近隣の県内企業の方のご予約は別途管理しております台帳で18:00ごろの来店が最も多いという傾向がわかっておりますので、観光と思われるお客様のご来店時間を21:00ごろにシフトすることができれば、2回転させるということもできるのではないかと思います。

18:00から20:30ごろまでが、主に県内企業のお客様、21:00から23:30までの時間帯に県外からのお客様を、それぞれに合わせたプランを提示させていただくことで回転数を向上させることができると考えております。

また、どのサイトからのご予約がどのような傾向にあるのかといったことも把握できましたので、サイトごとに適切なプランを設け掲載することでマーケティングに活かすことも考えています。

画像:ダッシュボードを見ながら今後の取り組みについて説明する又吉さん(左)

今後どのようにデータ活用を推進されますか

今回、お客さまの傾向分析として構築されたダッシュボードから読み取れる情報を用いて、回転率向上のための新たなコースメニューなどの作成に着手しております。

また、今回こうしたデータを目の当たりにしたことで、POSレジに正しい情報を打ち込むことの大切さを再認識しました。繁忙期などはご予約のお客さまのご来店前に来店処理を一括でしてしまうといったこともありましたが、そうすると正しいデータが取れなくなってしまい、分析結果に差異が発生してしまいます。

データの活用も大事ですが、データを正しく集めることの重要性についてスタッフに共有し、データの活用を今後も続けていきます。

データが重要だということは当初より理解しているつもりではいましたが、データの収集のやり方が間違っていると、その後の分析結果に大きな乖離が出てしまうといったことも目の当たりにしましたので、そこに気をつけながら、次は実際に取り組んだ内容についてのデータを収集し、結果を見てみたいと考えております。

画像:データ収集の重要性も改めて認識したという伊東さん(左)と又吉さん

サービスURL

https://www.enokinawa.okinawa/

オープンデータ利用者のコメント

入退店の時間に着目して分析できたことは良かったです。データを正しく集めることの重要性も改めて認識しました。スタッフと共有しながら取り組みを進めていきたいと思います。

利用したオープンデータ

新型コロナウイルス感染症関連データ(1) 発生届に基づく陽性者一覧(沖縄オープンデータプラットフォーム)
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