綿密なデータ収集と分析から見えてくる課題【製造/卸/小売:野嵩商会】

更新日:2024.03.27

お話を聞いた方:株式会社野嵩商会 電算室室長 仲里 健司さん

                 前島店店長 比嘉 盛治さん

データを活用しようと思ったキッカケは?

フレッシュプラザユニオンは県内初の年中無休で24時間営業するスーパーです。20店舗を展開し、日頃より県民の皆様に多大なるご愛顧をいただいております。(2024年1月末現在、一時的に那覇市前島店のみ閉店中)

データ活用の実証としては2年目の取り組みとなります。1年目は、会員サービスの「ユニカード」からお客様の居住情報や年齢情報を抽出し、これをオープンデータの地域人口データと比較して分析を行いました。(取り組み紹介記事はコチラ https://odcs.bodik.jp/okinawa-dpf/usecase/740/)

分析から若年層の会員が少ないことがわかり、アクションとして40代以下の取り込みを始めました。この年齢層はスマホの利用頻度が高いことから、SNSのX(旧Twitter)や、動画プラットフォームのTikTokやYouTubeを介し、ユニオンを広く知っていただく広報活動を展開しました。結果、2022年11月から2023年3月迄の期間、20代では101.4%、30代では104.4%、40代では108.5%(11月対比)の会員数の伸長がみられ、若年層の会員を増やすことに成功しました。

このように、1年目の取り組みだけを見ても、データを分析して分かることと、それからの活用が、とても有意義であることを実感していました。

そこで2年目はさらに踏み込み、2022年11月より稼働を始めた、購買情報と顧客情報が紐づいたデータを収集できるID-POSから得たデータとオープンデータをかけ合わせた分析を行いたいと考え、引き続き沖縄ITイノベーション戦略センター様のご協力をいただき、データ活用実証支援プログラムに継続して取り組みました。

写真:会員向けのユニカードと連携するユニオンアプリも展開

データから明らかにしたかったことは

ID-POSから得たデータを分析して、地域ごとの店舗の売上状況や、お客様の購買傾向を知りたいと考えました。また、各地域の人口と所得状況のオープンデータと、お客様の利用状況を比較して分析することで、地域ごとの販促プロモーションを検討するための材料を見つけ出すことも目的でした。

写真:BIツールから様々な情報を読み取る仲里さん

使ったデータはどのようなものですか

当社が保有するデータとして、ID-POSデータ(2022年11月~2023年3月)と2023年8月時点での会員情報を用意しました。

オープンデータとしては、沖縄県が公開している「令和05年住民基本台帳年齢別人口」、政府統計の総合窓口(e-Stat)で公開されている「令和2年度県民経済計算(課税対象所得)」、「令和2年度市町村税課税状況等の調(納税義務者数(所得割))」を使いました。

どのようにデータを活用しましたか

さまざまな分析を行うことで、多くの発見を得ることができました。

まず、売上と客数推移を視点とした分析においては、ともに増加傾向にあることが分かりました。1年目の取り組みを通して、チラシなどの紙媒体をデジタル化したことによる成果であると実感しています。

さらに、売れ筋商品を見極めるために

ABC分析を実施したところ、実はユニオンでは売れないだろうと考えていた国産需要があることが分かりました。ディスカウントによるバリュー提供が中心の経営戦略でしたが、この分析を通して、お客様が求める商品を具体的に揃えることができるようになりました。

また、購買情報と顧客情報が紐付いたデータを活用できるようになったことから、より踏み込んだ分析として、いわゆる優良顧客に着目できるデシル分析とRFM分析も行いました。

デシル分析では主に購入金額を切り口とし、RFM分析では直近の購入時期、購入頻度、購入金額からお客様をグループ化して分析しました。これにより、「当たり前に需要があるもの」「当たり前に売れるもの」といった漠然とした販促プロモーションや商品選定から、優良顧客層で比較的高頻度で購入されている商品を選定し、値引や割引クーポンの商品として採用する、採用後の販売動向を追跡してみる等、どのような販促プロモーションを考え、それをどのお客様へ展開すれば良いのかを検討する材料として活用できるようになりました。

その他、オープンデータをもちいて市町村ごとの所得状況と会員の利用状況にフォーカスしてみると、平均所得は県内で比較的上位あるにもかかわらず、会員の客単価が低い市がありました。その地域を調べてみると、競合店が多く、お客様を取り込めていないことが分かりました。他店舗との競争ということが分かれば、必要な対策をより具体的に考えることができます。

続いて、地域ごとの所得状況と、その地域の人口に対する会員比率も分析したところ、、もっとお客様を取り込んで会員比率を高めていきたい地域を見つけることができました。

画像:地図上で可視化した会員の居住状況

今回のデータ分析は地域ごとの店舗単位で取り組みましたが、ここで、那覇市前島店で大きな発見がありました。以前から売上の高い店舗でしたが、改めて会員情報を含めてデータを分析したところ、慶良間諸島をはじめとした、泊港とつながる離島のお客様に多く利用されていることが分かりました。

売上の高い店舗ですから、購買状況をデータとして取り込んで分析し、魅力あるサービス展開に活用したいところです。しかし、会員売上を離島に絞り込んで見たときに、私たちスタッフが認識している売上と乖離があり、会員登録されていないお客様がいるということを改めて認識しました。

ニーズに合わせたサービスを提供するためには、会員として登録いただいた上で購買情報のデータを分析することが理想です。とはいえ、そうはいかない部分もありますので、会員カードのご用意がない離島のお客様のお買い物のデータも収集できるよう、店舗側でデータ収集用の会員IDを用意して対応することを考えています。前島店は2024年1月末現在、建物の老朽化により一時的に閉店していますが、代替策として赤嶺店で対応を続けています。離島のお客様向けの策を早々に検討して取り組みたいところです。

具体的な施策の検討と実施は、まだまだこれからといった状況にありますが、ID-POSの導入を通してお客様単位のデータを収集できるようになり、より綿密なデータ分析が行えるようになり、データに基づいてアクションを起こすことが出来るようになりました。

今後どのようにデータ活用を推進されますか

2年目は1年目よりもさらに深い取り組みができました。今回の取り組みから得た発見とBIツールの運用をあらためて各店舗へ落とし込み、店舗自身が自ら状況を理解・把握し、データ分析を通してアクションを起こせるように展開することを考えています。

また、よりスピーディに対応できるよう、ID-POSから得たデータをリアルタイムでBIツールに取り組む改良を進めています。これにより、スーパーに必要な日々の対応を迅速に行うことができます。その結果、当社も潤い、何よりもユニオンをご利用いただくお客様により多くの幸せをお届けすることができます。

写真:店舗ごとによるデータ分析と活用が重要であることを再認識した店長の比嘉さん

サービスURL

https://union-okinawa.com/

オープンデータ利用者のコメント

データ分析を通した見える化が進むことによって、それまで漠然としていたものがより具体的なものとして捉えられるようになりました。より綿密なデータ分析ができるようになった2年目は、さらなる発見とともに、新たな課題も浮き彫りになり、弛まない取り組みが必要であると実感しています。

利用したオープンデータ

令和05年住民基本台帳年齢別人口(沖縄県公開データ) 令和2年度県民経済計算(課税対象所得)(内閣府経済社会総合研究所) 令和2年度市町村税課税状況等の調(納税義務者数(所得割))(総務省) 課税対象所得(県民経済計算)※政府統計の総合窓口(e-Stat)からもダウンロード可能 課税対象所得(県民経済計算)※政府統計の総合窓口(e-Stat)からもダウンロード可能
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