会員情報とオープンデータからお客様の傾向を把握して経営戦略を模索する【小売:プラザハウス】

更新日:2024.03.20

お話を聞いた方:Roger’s ARENA Assistant Floor Manager 神田 航さん

データを活用しようと思ったキッカケは?

プラザハウスショッピングセンターは、1954年7月4日に開業した、日本初のショッピングモールです。開業当初は沖縄県に在住する米軍関係者と、その家族の生活を支えることを目的とした商業施設でした。1966年頃から県内のお客様にご利用いただけるようになり、海外の服飾品や雑貨、家具などを取り扱うプラザハウスは、先進的な海外文化を発信する商業施設として発展してまいりました。また、ショッピングをより楽しんでいただけるよう、入会費と年会費が無料のロージャースプレミアムクラブという会員サービスを展開し、おかげさまで約8万人のお客様に登録していただいています。

 

2015年以降、近隣に大型商業施設のイオンモール沖縄ライカムが開業し、浦添市にはパルコシティが開業しました。競争が激化していくショッピングモール業界において、お客様の新規獲得や囲い込みなど、早急に取り組むべき経営課題を抱える中、県事業のデータ活用実証支援プログラムがあることを知り、これまでに溜まった会員情報とオープンデータによる分析が役に立つのではないかと考え、取り組ませていただきました。

 

アメリカンスタイルが特徴的な開業頃のプラザハウス

 

データから明らかにしたかったことは

プラザハウスのメインターゲットは40代~60代の方なのですが、30代以下のお客様も増やしていきたいと思っています。30代は結婚、出産で子どもを持つ世代なので、家庭を持つ30代の方にアピールできれば、その世帯の子どもたちにプラザハウスを潜在的にアピールすることができ、将来のプラザハウスユーザーになっていただけるのではないかと考えています。

 

まず、たまっている会員のデータ分析を通して、どの年齢層の方が、どの地域から来ていただているのか、どのような特徴があるのか、これらの見える化を行い、明確にした上で、30代以下の世代に向けたアプローチ方法について検討する材料となれば、と考えていました。

プラザハウスについてお話していただいた神田さん(左)

使ったデータはどのようなものですか

当社が保有するロージャースプレミアムクラブの会員情報と、沖縄県が公開しているオープンデータの「令和04年住民基本台帳年齢別人口」、政府統計の総合窓口(e-Stat)で公開されている「課税対象所得 (県民経済計算)」、「納税義務者数(所得割) (市町村税課税状況等の調)」です。

ほか、QUID Monitorの「SNS反響分析」とマチレポの「2023年7月~9月の人流データ」を提供していただきました。

 

どのようにデータを活用しましたか

約8万人の会員の中から、住所が登録されている約4万人の会員情報を抽出し、まずはこの中から居住地別(市町村と字別)に会員数を地図に落とし込んだものを見てみました。プラザハウスの所在している沖縄市に会員が最も集中していますが、人口の多い那覇市にも多くの会員がいることが確認できました。

 

次に、オープンデータと掛け合わせて詳細な分析を行いました。

具体的には、各市町村の人口に対して、会員の占める割合が高い市町村を洗い出しました。すると、プラザハウスの所在地となる沖縄市からのお客様が多かったのはもちろんですが、北中城村と北谷町、嘉手納町からのお客様が多いことが分かりました。

さらに、市町村ごとの平均所得で見てみると、県内でも平均所得の高い市町村からのお客様が多く、北中城村と北谷町、嘉手納町が上位に入っていました。

 

これにより、中心となるお客様は中高年層で平均所得の高い地域、そしてプラザハウス周辺在住であることが明確になりました。

画像:可視化したロージャースプレミアムクラブの会員情報

 

SNS反響分析では、指定したキーワードについて、どういった内容の投稿が、どういった投稿者(年代・性別)に、どの程度行われているかを確認できるということでしたので、「プラザハウス」をキーワードとした投稿に着目したところ、10代~30代前半の女性が多いことが分かりました。

30代以下の会員を増やすためのアプローチ方法を検討していたところでしたので、10代~30代向けの販促ツールとしてSNSが有効だと判断しました。

 

さらに、人流データから競合分析を実施しました。人流データを使うことで、指定した地点を訪れた人の属性が分析できるということでしたので、同業種でベンチマークしていた他店と当店について、来訪者の内訳に着目しました。すると、当店と比べて同業多店舗の方が10代~30代の比率が高かったことから、その店舗のSNS投稿を参考にさせていただきました。

 

実際にSNSのInstagramを通して20代~30代の女性に向けたデザインや内容を意識して投稿をしたところ、ひと月でフォロワーが1.4%増え、アクションは22.3%伸びました。確かな手ごたえを感じたため、Instagramの投稿は継続的に行っています。ユーザーの反応を探りつつ、取り組みを進めています。

 

また、いわゆるZ世代はSNSで情報収集することが多いと言われていますので、スタッフの名刺にSNSのQRコードを記載するなど、SNSアカウントの周知を図るための施策について、社内で検討しています。

プラザハウスのInstagram

 

今後どのようにデータ活用を推進されますか

まずは今回のデータ分析結果を社内で共有し、組織全体にデータ活用が有効であることを浸透させます。次に、具体的に有効な戦略を立て、実行します。今回のデータ分析を通して10代~30代の会員が少ないことが分かったので、この年齢層の会員を増加させることが最優先の取り組みとなります。

また、取り組みを進めていく上で、新たに社員教育や環境整備などの課題が見えてくると思います。データ活用を通して価値ある結果を得るためにも、逐一見直しを図り、取り組んでいこうと考えています。

データ活用を通して経営戦略を模索する神田さん

 

サービスURL

https://plazahouse.net/

オープンデータ利用者のコメント

プラザハウスの成長に向けた具体的な行動を考えるためにも、戦略的な意思決定の基盤として課題を整理し、仮説を立て、データを活用していくことが重要であることをあらためて認識することができました。また、データ活用を通して新たな視点を持つことができ、DX化や他企業における同様の取り組みについても興味を持つようになり、自身が変革したことを感じています。

利用したオープンデータ

令和04年住民基本台帳年齢別人口 郵便番号データ 県民経済計算(課税対象所得)内閣府経済社会総合研究所 市町村税課税状況等の調(納税義務者数(所得割)総務省 課税対象所得(県民経済計算)※e-stat 納税義務者数(所得割)(市町村税課税状況等の調)※e-stat
TOPへ戻る