クリニックと患者様の未来をひらくデータ活用【医療:新健幸クリニック】

更新日:2024.03.18

お話を聞いた方:新健幸クリニック 事務長 我那覇 靖志さん

データを活用しようと思ったキッカケは?

当院は、腎臓病、リウマチ、膠原病を中心とした専門医療を提供するクリニックです。地域の先生方と協力して早期診断、継続した医療を実践し、県民の健康維持の為、予防医療に取り組んでいます。また、腎臓病やリウマチと関連性のある生活習慣病や整形外科などの専門医(非常勤)の応援を頂きながら、日々の診療にあたっています。

2019年12月の開業から4年が経ち、患者様のデータ(年齢、性別、居住地など)も貯まってきました。

そのデータを分析し、改善すべき点があれば経営に生かしたいと考えていましたが、何を用意し、何をすれば良いのか、分析のやり方そのものが分からない状況でした。

労働人口が減少していく将来に備えて、自分たちで取り組める方法はないか、特に現行業務の中で、デジタル化出来る業務はないのかと模索していたところ、県事業にデータ活用の実証支援プログラムがあることを知り、取り組むことにしました。

写真:病院と同等の設備を持つクリニック

データから明らかにしたかったことは

業務のデジタル化を検討するにあたり、先ずは、当院の患者層を把握し、どのようなニーズがあるのかを調べることから始めました。

当院の患者様には年齢層の高い女性が多いということを常々感じていました。また、当院の専門とする腎臓病、リウマチ、膠原病の診療科と関連性のある専門医の応援を加えてきましたが、果たしてこれが正しい施策であったか、それを数値として知りたいと考えていました。

そのほか、開業した翌年にまん延した新型コロナによる影響も、今後の運営のために確認しておきたいことの一つでした。

写真:新健幸クリニックの取り組みについてお話していただいた我那覇さん

使ったデータはどのようなものですか

当院が使用しているクラウド型の電子カルテシステムから抽出した診療日ごとのデータ(2020年1月~2023年9月)と、沖縄オープンデータプラットフォームで公開されているオープンデータ「新型コロナウイルス感染症関連データ(1) 発生届に基づく陽性者一覧」です。

どのようにデータを活用しましたか

まず、当院の患者様について性別を分析したところ、女性が約66%であることが分かりました。年代別でみると30代後半から割合が増加し、70代後半までと幅がありましたが、ピークは50代前半でした。今後の診療方針を考える上で参考になると考えます。

来院数を見ると、腎臓内科の来院数の増加とともに、他の診療科の来院数も増加していました。全体の来院数も増加しており、当院が専門とする診療科と関連性のある診療科を拡充してきたことが正しい判断であったことが分かりました。

画像:開業から着実に来院数が増加している

新型コロナの影響を確認するため、当院を受診した患者数と新型コロナウイルス陽性者数の関係もグラフ化しました。

陽性者数のピーク時は、患者数に若干の落ち込みがありましたが、期間全体を通した患者数とコロナ陽性者数との相関係数は0.26と小さいもので、総じて見れば大きな影響は確認されませんでした。

画像:開業直後のコロナの影響

このことから、関連性のある診療科をワンストップで受診できるようにすることで、必要かつ適切な医療を提供できるようになり、患者の医療費負担も軽減できる可能性があると考えました。

そして、分析を通して分かったことの一つとして、医師によって対応した患者数に差があり、それを可視化できたことです。そのデータをもとに、医師の診療時間や待機時間の平準化を試みました。

その結果、すべての患者様に対してではありませんが、各医師の診療時間や待機時間の圧縮ができており、分析以前の受入患者数(※受付時間内で対応した患者数)より、平準化の取組み後の受入患者数は、約6~10%程度、増加しました。

先に述べたように、様々な症状の患者様が来院されるため、診療時間を完全に合わせるということは難しいですが、医師をはじめスタッフが効率的に診療を行うという意識の変容はできたように思います。効率化については、更なる分析を行っていきたいと考えています。

今後どのようにデータ活用を推進されますか

今後のデータ活用においては、病名データなどを紐づけし、性別や年齢、居住地などのデータとかけ合わせて分析することで、より効率的な診療(診察)の展開ができ、患者様の待機時間を減らすことができる可能性があると考えており、また、あわよくば、早期発見、早期治療につなげているのではないかと考えています。

社会保障費の増加を抑制していくためにも、医療提供側における、このような小さな取り組みが、医療費増加を抑制していく一助となると信じています。

写真:データ活用から大きな手ごたえを感じた我那覇さん

サービスURL

https://shinkenko-clinic.jp/

オープンデータ利用者のコメント

既に蓄積していたデータを使い、課題や目的から立てた仮説の実証に取り組みましたが、限られたデータということもあり、難しかったというのが率直な感想です。しかし、そもそも「データを分析、検証して改善していく」という、そのやり方を学べたことは大きな成果でした。また、収集するデータ次第で、新たな可能性が次々と具体的に見えてくることを実感しました。

利用したオープンデータ

新型コロナウイルス感染症関連データ(1) 発生届に基づく陽性者一覧(沖縄オープンデータプラットフォーム)
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